下痢に悩まされてはいませんか
下痢は便の中の水分量が増えている状態のことであり、細菌性、ウイルス性、炎症性腸疾患、栄養失調、過敏性腸症候群、食べすぎや偏った食事など様々な原因で生じます。
下痢は2~3日で治る軽症なものから、脱水を伴って重症のもの、3週間以上続く慢性の下痢など様々です。ほとんどの場合が数日で改善する軽症な下痢ですが、中には緊急性の高い疾患が隠れていることがあり、致命的になることもあります。下記のようにいつもの症状と違ったり、違和感を感じた際はすぐに医療機関を受診しましょう。
ATTENTION緊急性の高い症状
- これまでにないほどの激しい下痢
- 下痢に多量の血が混ざっている
- 排便しても腹痛がおさまらない
- 吐き気・嘔吐、発熱を伴う
- 同じものを食べて同時に発症した人がいる
- 回復せず、時間の経過とともに悪くなる
- 脱水症状が起きている(尿が少ない・濃い・出ない、口が異常に渇く)
脱水症で致命的になることがあります
下痢が続くと脱水症状を起こす危険性が高まります。特に嘔吐が伴うなど十分な水分補給ができないと脱水が急速に進む可能性が高くなります。
- 4タイプに分けられる下痢
下痢は急性の浸透圧性下痢・分泌性下痢、慢性の蠕動運動性下痢・滲出性下痢の4タイプに分けられます。
①浸透圧性下痢
アルコールや脂質の過剰摂取、食べ過ぎなどによって腸の吸収機能が低下し発症する下痢です。
吸収機能が低下することで便に含まれる水分が多くなり、急性の下痢を生じます。
②分泌性下痢
腸粘膜に感染による障害が起こり、腸管内の水分分泌が過剰になって発症する下痢です。
感染以外にも、食物アレルギーや薬の副作用などで生じるケースもあります。
③過敏性腸症候群
消化管の内容物を先に送る蠕動運動が過剰に働いて生じる下痢です。
蠕動運動が亢進すると水分を十分に吸収できず下痢になります。
④滲出性下痢
腸に慢性的な炎症を起こす潰瘍性大腸炎やクローン病などの症状として生じる下痢です。
腸の粘膜から血液成分や細胞内の液体が流れてしまう、または炎症により水分吸収能力が低下し、下痢になります。
- 下痢を起こす主な疾患
過敏性腸症候群
腹痛を伴う下痢や便秘、膨満感などを慢性的に起こす疾患です。ストレスや食生活、腸の機能不全、知覚過敏などが関与して発症すると考えられています。
主な症状によっていくつかのタイプに分けられ、下痢型では突然強い腹痛を起こしてトイレに駆け込むほどの激しい下痢になるというのが典型的な症状です。他に、下痢と便秘を繰り返すタイプもあります。炎症など器質的な病変がなく、ストレスをきっかけに症状を起こすことが多く、睡眠中は症状を起こさないことから気持ちの問題と誤解されることもありますが、機能の問題を適切な治療で解消し、生活習慣を見直すことで改善が望める疾患です。詳しくはこちらのページも参照してください。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病は炎症性腸疾患とよばれ、長期にわたる下痢の原因となることがよくあります。
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こす疾患で、慢性的に下痢や血便、腹痛などの症状が続きます。症状のある活動期と寛解期を繰り返します。
クローン病は小腸や大腸だけでなく、口から肛門まで消化管全体に原因不明の炎症や潰瘍ができる病気で、特に小腸の一番末端に好発します。症状のある活動期・再燃期と症状のない寛解期を繰り返します。
いずれの病気も慢性的な下痢を起こすことが多く、慢性的な下痢の症状がある方は大腸カメラ検査をうけることをお勧めします。詳しくはこちらのページも参照してください。
大腸ポリープ
大腸ポリープが大きくなって便通を阻害すると、下痢や便秘などの症状を起すことがあります。
下痢以外には、血便などを生じることもあります。大腸ポリープは腸の内側に膨みのある病変全般を意味し、多くが良性疾患ですが、放置して大きくなった場合、大腸癌に進行する可能性があります。その場合多くが無症状で、残念ながら治療が遅れて末期がんへと進行してしまうこともあります。前癌病変のポリープを切除することで将来の大腸がん予防につながります。詳しくはこちらのページも参照してください。
ウイルス・細菌が原因の感染性腸炎
腸炎ビブリオ・病原性大腸菌・サルモネラ・カンピロバクター、ノロウイルス・ロタウイルスなど、下痢を起こす病原体は数多くあります。嘔吐や発熱などを伴うことも多くなっています。注意が必要なのは、感染性腸炎の下痢の場合、市販の下痢止めを服用すると増殖した病原体や病原体がつくりだした毒素の速やかな排出が遅れ、重症化しやすくなることです。感染症が疑われる下痢の場合には、自己判断で下痢止めを服用するのは厳禁です。
細菌性腸炎の場合は抗生剤投与が良く効くことがあります。感染性腸炎の原因菌を特定するために採便を行い、培養検査で原因菌がはっきりすることもあります。しかし長期に抗生剤の投与を行うと、腸内のいわゆる善玉菌も減少してしまい、抗生剤の効きにくい菌が増殖することで下痢を引き起こすこともあります。
- 下痢の検査
下痢の便の状態を具体的にお伝えいただくことで、必要な検査を絞り、正確な診断を速やかに得られます。便の色、状態、匂い、頻度などをできるだけくわしく医師にお伝えください。問診では、感染や暴飲暴食など、下痢を起こす原因の心当たりや下痢以外の症状などについてもしっかり確かめます。
慢性的な下痢が続いている場合には潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸がんなどの可能性がありますので、大腸カメラで大腸粘膜の状態を確かめ、組織を採取し、病理検査を行って確定診断につなげます。当院では患者さんの心身への負担を最小限に抑えた大腸カメラを提供していますので、安心してご相談ください。
- 下痢の治療
原因疾患に合わせた治療を行います。下痢などが酷く、経口摂取も少ない場合は脱水の危険性があるため、点滴などで水分を補給します。食べ過ぎなどによる急性の下痢の場合には、十分な水分補給、腸への負担が少ないものを少量ずつ食べる、安静にする、そして冷えの解消が重要です。
ウイルス性の下痢症が考えられる場合は抗生剤など効果がないため不要です。カンピロバクターや病原性大腸菌、サルモネラなどの感染症が疑われる場合は抗生剤が有効です。
潰瘍性大腸炎やクローン病が原因と考えられる場合は抗生剤が無効であり、炎症を抑えるために、5-ASA製剤や免疫調整剤、抗TNFα抗体製剤などを使用します。
いずれの治療を決めるにも正しい診断と、正しい検査が必要です。治療方針の決定のために大腸カメラ検査が必要となることもあります。
このような便秘の症状はありませんか?
- 数日に1回しか排便がなく腹部に不快感がある
- 排便後も残便感がある、すっきりしない
- 腹部膨満感がり、おなかが張る
- 血便や真っ黒な便が出た
- 腹痛が伴う
- 薬の内服や浣腸をしないと出ない
- 便秘と下痢を繰り返す
- 便秘薬が効かなくなってきた
こうした症状が現れる場合、慢性的な便秘と考えられます。便秘はいわゆる通常の便秘に加え、疾患の症状として現れている場合もあります。また
- 便秘について
スムーズな排便ができず、本来であれば排出されるべき便が体内にとどまって、不快な症状を起こしている状態です。便通が2日に1回でも快適に排便できて残便感がなければ便秘ではありませんが、毎日排便があっても強くいきむ必要があったり、少量しか出ず残便感があったりといった場合は便秘と考えられます。具体的には、排便回数減少(排便が週3回未満)、排便困難(強くいきまないと排便できない・便が硬く出しづらい・残便感がある・服薬しないと出ないなど)があります。
- 便秘の種類
便秘は原因によって4タイプに大きく分けられ、それぞれ適した治療法が異なります。便秘を解消するためには消化器内科を受診し、原因をしっかり確かめてそれに合わせた治療を受けることが重要です。当院では再発防止も視野に入れた治療を行っていますのでお気軽にご相談ください。
①弛緩性便秘
大腸の蠕動運動低下によって生じる便秘です。便を送る機能が低下して便が長くとどまってしまい、水分を過剰に吸収されて便が硬くなり、排便が困難になります。女性や高齢者に多く、加齢による筋力低下、運動不足、水分不足、食物繊維不足、ダイエットなどによって生じることが多くなっています。腹部膨満感、食欲低下、残便感などに加え、肩こりやイライラ、肌荒れなどを起こすこともあります。
②痙攣性便秘
大腸の過緊張によって生じる便秘です。消化管の機能を司る自律神経のバランスが崩れ、腸管が緊張して便が停滞し、ウサギの糞のように小さくて丸いコロコロした便が出ます。強くいきんでも少量しか出ず、残便感があります。主な症状は食後の下腹部痛、残便感であり、便秘と下痢を繰り返す症状を起こすこともよくあります。過敏性腸症候群によって生じることが多いタイプです。
③直腸性便秘
直腸に便が停滞して生じる便秘です。通常であれば、便が直腸に来た刺激で便意を起こしますが、便意を我慢していると直腸に便が来ても便意を生じなくなり、直腸に便がたまって便秘になります。切れ痔で排便に痛みが伴うことで無意識に便意を我慢して発症し、痔と便秘を繰り返す悪循環を起こすことがあります。硬くなった便の刺激が続いて大腸粘膜に潰瘍や出血を起こすこともあります。
④器質性便秘
疾患の症状として便秘が起こっている状態です。腸閉塞(イレウス)、腸管癒着、大腸がん、大腸ポリープなどによって生じます。腸管に狭窄やサイズの大きい隆起性病変があって通過障害が起こっていますので、刺激性下剤を服用してしまうと腸管に穴が開いてしまう腸管穿孔を起こす可能性があり、危険です。早急な受診が必要です。便秘に加え、血便や強めの腹痛、吐き気や嘔吐などを伴うこともあります。
- 便秘の原因
便秘の多くは食事の偏り、運動不足、睡眠や休息の不足、ストレス、薬の副作用、排便習慣を含む生活習慣などが原因となります。
しかし時折、症候性便秘といって何かの病気が原因で便秘の症状がおこることがあります。代表的な病気は大腸がんや直腸がんがあります。ここ最近便秘がひどくなった、便が細くなった、時折血液が混じるようになった等の症状は要注意です。一度は大腸カメラを受けることをおすすめします。
また、便秘発症に疾患が関与していない場合でも、慢性的な便秘が続くことで多くの大腸疾患や痔を発症するリスク、心疾患、脳血管障害などのリスクが上昇してしまいます。
便秘は消化器内科で適切な治療を受ければ解消と予防が可能な症状です。快適な生活を送るためにも、便秘の症状が続く場合にはお気軽にご相談ください。
便秘の治療・予防
まずは生活習慣の改善が治療の基本です。
- 定期的に運動をする
- 規則正しい時間に食事を食べる
- 水分をしっかり摂取する
- ヨーグルトなどの乳酸菌を摂取する
- 便意を我慢せずに便意を感じたらなるべく早く排便する
などの習慣が便秘を改善させるために大事です。
生活習慣の改善をしても治らない場合や、生活習慣の改善がなかなか難しい場合は薬物療法を行います。ここ近年は便秘薬もかなり進歩しており、さまざまな種類の薬が登場していますので、ご自身にあった薬をみつけることができると思います。
-食事
水分や食物繊維を必要量しっかりとり、栄養バランスがとれた食事を心がけてください。食事は毎日決まった時間に3食をとることが重要です。脂質は不足すると腸の働きが低下し、スムーズな排便ができなくなります。ダイエット中でも適度な脂肪をきちんと摂取しましょう。また、食物繊維や乳酸菌などの摂取は善玉菌を増やす効果を期待できますので、どちらも十分にとるようにしてください。
-食物繊維
食物繊維は消化吸収されないので便のかさが増え、排便がスムーズになります。コレステロールや有害なものを吸着して排出させる働きがあり、糖の吸収を遅らせて食後血糖値の急上昇や急降下を起こしにくくします。
食物繊維には、水に溶ける水溶性、水に溶けない不溶性の2種類があり、便秘の原因によって理想的な水溶性・不溶性食物繊維の摂取バランスは変わってきます。不溶性食物繊維は蠕動運動を活発にして得便通改善効果が期待できますが、便秘のタイプによっては便を硬くしてしまう可能性がありますので、食物繊維のとり方については必ず医師に相談してください。
不溶性食物繊維を豊富に含む食品
穀類、野菜、豆類、キノコ、海藻、果物など
水溶性食物繊維
昆布、ワカメ、サトイモ、果物など
-腸内フローラ
便の固形成分は食べものを消化吸収したあとのカスだけではなく、腸内細菌やはがれた腸粘膜などの老廃物もかなり多くなっています。腸内細菌が増えると便の量が増え、排便がスムーズになります。食品に含まれる善玉菌である乳酸菌は腸内に乳酸をつくりだし、悪玉菌が増えにくく善玉菌が増加しやすい弱酸性の環境に整えます。乳酸菌はチーズやヨーグルトなどに含まれる動物性が有名ですが、漬物や味噌などに含まれる植物性もあり、腸内フローラを整えるためにはどちらも必要です。
-薬物療法
便を軟らかくする薬、蠕動運動を整える薬などがあり、作用機序や効果の出方などの違いもあり、症状や体質、ライフスタイルなどにきめ細かく合わせた処方が可能です。新しい作用を持った新薬なども登場していますので、市販薬では十分な効果が出なくなった場合にも有効な処方が可能です。成分によっては、常用すると腸の機能が低下しやすいものもありますので、経過を観察しながら処方を微調整して適切な処方を保つことが重要です。当院では漢方薬などを組み合わせた治療も可能です。服薬回数をできるだけ抑えたい、カプセルは苦手などのご希望にもできるだけお応えしていますので、些細なことでも遠慮なくお伝えください。
便秘のお悩みはまず当院へ
東海内科・内視鏡クリニック 岐阜各務原院では、消化器内科の専門医が便秘治療を行っています。「便秘は体質だからあきらめている」「市販薬が効かなくなってきた」「治療を受けても改善しない」など、便秘に関するお悩みがありましたらお気軽にご相談ください。
便秘のように生活習慣も解消や予防に大きな役割を果たす症状の治療では、患者さんが必要性を十分に理解した上で治療を進めることで大きな効果を得やすくなります。当院ではコミュニケーションを大切に考えた治療を行っており、丁寧に説明しています。
また、当院では必要に応じて無痛の大腸カメラを行うなど、より詳細で精度の高い検査を行って原因を確かめ、より効果的な治療につなげています。