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進化する糖尿病薬~SGLT-2阻害薬を中心に~

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こんにちは。院長の神谷です。

本日は進化する糖尿病薬について私見を交えて書きたいと思います。

 

糖尿病治療の始まり


糖尿病治療はインスリンなどの糖尿病薬が開発されるまで食事療法のみしか対処がなく、特に1型糖尿病の患者では治療の施しようがなく、死に至る病として恐れられていました。

しかし、1922年に世界ではじめてインスリンが糖尿病患者に投与され、糖尿病治療薬の歴史がスタートしました。

その後、ビグアナイド薬やスルホニル尿素薬などが開発され、近年は、様々な薬がでてきており、単に糖尿病だけではなく、心不全や慢性腎臓病にも適応を有するものがでてきました。

 

代表的な糖尿病治療薬は以下の通りです。

・ ビグアナイド薬 ・・・・・・ 肝臓での糖新生の抑制

・ チアゾリジン薬 ・・・・・・ 骨格筋・肝臓でのインスリン感受性の改善

・ スルホニル尿素薬・・・・・ インスリン分泌の促進

・ 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)・・・速やかなインスリン分泌の促進

・ DPP-4阻害薬 ・・・・・・ 血糖依存でのインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制

・ α-グルコシダーゼ阻害薬・・・糖質の吸収遅延 

・ SGLT2阻害薬 ・・・・・・ 腎臓での糖分の再吸収阻害 

・ GLP-1受容体作用薬・・・ 血糖依存でのインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、胃排出遅延

・ インスリン製剤 ・・・・・・ インスリン注射製剤

 

今回は最近さまざまなエビデンスが蓄積されてきているSGLT-2阻害薬について書きます。

 

SGLT-2阻害薬とは


血液から尿が作られるときにグルコース(糖分)も尿に濾過されますが、グルコースは尿細管でほぼすべてのグルコースが再吸収されます。近位尿細管の起始部でSGLT2により90%以上が再吸収され、遠位側でSGLT1により残り10%が再吸収されます。

SGLT-2阻害薬はその作用を阻害することで、尿中にグルコースを排出させ、血糖を下げる薬剤です。

現在、SGLT-2阻害薬は、

・ スーグラ®(イプラグリフロジン)

・ フォシーガ®(ダバグリフロジン)

・ ルセフィ®(ルセオグリフロジン)

・ デベルザ®・アプルウェイ®(トホグリフロジン)

・ カナグル®(カナグリフロジン)

・ ジャディアンス®(エンパグリフロジン)

が発売されています。SGLT-2阻害薬の効果は血糖を下げるだけでなく、いろいろな副次作用があることがわかっています。

①心不全

左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者には、心不全の悪化の予防や死亡率を低下させことが明らかとなっています。日本循環器学会/日本心不全学会 2017 年改訂版急性・慢性心不全診療ガイドラインにおいては心血管疾患のハイリスク 2 型糖尿病患者における心不全予防に対してダパグリフロジンとエンパグリフロジンが推奨クラス I・エビデンスレベルAに位置づけられています。その後、日本循環器学会・日本心不全学会から「心不全治療における SGLT2 阻害薬の適正使用に関する Recommendation」が発出され、糖尿病の有無にかかわらず、左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者への投与が推奨されるようになりました。心不全治療の新常識であるファンタスティック4の一翼にも挙げられるようになりました。

②慢性腎臓病

腎臓を守る作用があることがわかってきています。

Packerらの報告ではSGLT-2阻害薬であるエンパグリフロジが、慢性腎臓病のeGFRの低下を抑制していることが示されました。つまり、腎臓病の悪化を予防する作用があるということです。

エンパグリフロジンはプラセボと比較して優位にeGFRを維持することができます。

さまざまな研究結果の蓄積を受けて、日本腎臓学会が2022年に出したRecommendationでは「SGLT2 阻害薬は,糖尿病合併・非合併にかかわらず、CKD 患者において腎保護効果を示すため,リスクとベネフィットを十分に勘案して積極的に使用を検討する」としています。

しかし、進行した慢性腎臓病(eGFR 15 mL/分/1.73m2 未満)では使用は推奨されておらず、慢性腎臓病と診断されれば、なるべく早期に始めることが推奨されています。

 慢性腎臓病を予防する薬というものはこれまであまりなく、ACE阻害薬やARBなどの薬剤がありましたが、それにさらにSGLT-2阻害薬という新たな治療手段が加わりました。

 

③尿酸値の低下作用

糖尿病がある方でもない方でも尿酸値を低下させることが報告されています。

SGLT-2阻害薬の作用で、尿に排出する尿酸が増加し、尿酸値が低下します。

④血圧を下げる作用

血圧を下げる作用があるとされています。利尿効果による体液減少や体重減少、交感神経活性抑制作用などが挙げられています。通常の降圧薬などにより降圧治療を行っているにもかかわらず血圧コントロールが不良である場合には,SGLT2 阻害薬使用を考慮してもよいとされています。

副作用について


ここまでの話を見てみると、非常に優れた薬で、いますぐに開始したいと考える方もみえるかもしれません。

しかしながらSGLT-2阻害薬は薬剤ですので、副作用を起こすこともあり注意が必要です。

この薬に特徴的な副作用は以下のとおりです。

①頻尿

尿から糖分を捨てるため、浸透圧利尿により尿量が増加します。尿量の増加により頻尿になります。

②尿路感染症、性器感染症

尿中の糖分が増えるため、感染症を起こしやすくなります。膀胱炎やカンジダ症などの陰部感染

症を起こすことがあります。

③高齢の方ではフレイルを助長する可能性も

また、サルコペニア・フレイルを助長する可能性が指摘されています。
尿糖排出からカタボリズム亢進状態となり,脂肪量のみならず筋肉量も減少させる可能性が指摘されており、痩せている方でご高齢の方はSGLT2阻害薬の影響でサルコペニア・フレイルが進む可能性があります。

 

まとめ


・ SGLT-2阻害薬は比較的新しい糖尿病薬です。

・ 血糖を下げる効果の他に心不全や慢性腎臓病にも効果が認められてきています。

医学に進歩は日進月歩です。常に治療の常識がかわっていきます。

糖尿病をお持ちの方で同じ薬を飲み続けている方も、一度治療を見直してみるとさらによい治療効果が得られるかもしれません。

 

東海内科・内視鏡クリニックでは、糖尿病の診療を行っております。治療のご相談がある場合はお気軽に当院にお尋ねください。

東海内科・内視鏡クリニック

院長 神谷 友康

当院の糖尿病のページもご覧ください。

 

参考文献

Zinman B, Wanner C, Lachin JM, Fitchett D, Bluhmki E, Hantel S, et al. Empagliflozin,
Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. N Engl J Med.
2015;373:2117-2128

Yip ASY, Leong S, Teo YH, Teo YN, Syn NLX, See RM, Wee GF,Chong EY, Lee C, Chan MY, Yeo T, Wong RCC, Chai P, Sia CH.Effect of sodium-glucose cotransporter-2 (SGLT2) inhibitors onserum urate levels in patients with and without diabetes: a systematic review and meta-regression of 43 randomized controlledtrials. Ther Adv Chronic Dis 2022;13:20406223221083509

日本腎臓学会「CKD 治療におけるSGLT2 阻害薬の適正使用に関するrecommendation」

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