更年期障害

更年期障害とは

更年期障害とは更年期は女性が閉経に近づき、エストロゲンなどの女性ホルモンを分泌する卵巣の働きが衰え、女性ホルモンが欠乏した状態で、身体が安定するまでの時期を指します。更年期の症状は様々なものがありますが、更年期症状の中で日常生活に支障を来す病態を更年期障害と定義されています。この時期に女性の体が経験するホルモンの変化、特にエストロゲン(女性ホルモン)の減少によって引き起こされると考えられています。このホルモンの変化は、身体的、心理的な様々な症状を引き起こすことがあります。

目次

 


 

i.症状

症状更年期障害に伴う症状は個人差が大きく、一部の女性ではほとんど症状がない方もみえますが、日常生活に影響を及ぼすほど重度の症状が現れる方もみえます。代表的な症状には以下のものがあります。

  • ホットフラッシュ(潮紅):
    突然の体温の上昇と発汗を感じる症状で、特に夜間に顕著です。
  • 睡眠障害:
    不眠や睡眠の質の低下。
  • 情緒不安定:
    イライラやうつ症状、不安感。
  • 膣の乾燥と性交痛:
    エストロゲンの減少による膣の変化。
  • 骨粗しょう症:
    骨の密度が低下し、骨折しやすくなる。
  • 心血管系の問題:
    心臓病のリスクが増加することがあります。

 


 

ii.原因

更年期障害の主な原因は、卵巣の機能低下によるエストロゲンとプロゲステロンの産生減少にあります。これらのホルモンの減少は、自律神経の不安定さや、上記の症状を引き起こします。

 


 

iii.診断

更年期障害の診断は、主に症状の評価と患者の病歴に基づいて行われます。血液検査でエストロゲンや卵胞刺激ホルモン(FSH)の測定や、更年期障害によく似た症状があらわれる甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症の除外のため、甲状腺ホルモンの測定を行います。

 


 

iv.治療

更年期障害の治療は、症状の緩和を目指し、下記のような治療を行います。

1.ホルモン補充療法(HRT)

ホルモン補充療法は、エストロゲンとプロゲステロンの補充を通じて、更年期に関連するホルモンの減少に起因する症状を緩和する治療法です。HRTは特にホットフラッシュ、夜間の発汗、膣乾燥、気分変動などの症状に対して効果的です。ただし、HRTは乳がん、血栓症、心血管疾患のリスクを増加させる可能性があるため、患者の健康状態とリスクを慎重に評価した上で使用する必要があります。

2.漢方薬

更年期障害の治療において、漢方薬は非ホルモン治療の選択肢の一つとして注目されています。漢方薬は、その症状緩和効果だけでなく、個人の体質や病気の原因を総合的に評価し、体内のバランスを整えることに重点を置いています。以下に、更年期障害に対する一般的な漢方薬とその効果について説明します。

①当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散は、気血(エネルギーと血液)の流れを調整し、特に血の不足によって引き起こされる症状に対して有効です。当帰芍薬散は、更年期障害に伴う様々な症状、特にイライラや不安、頭痛、肩こり、月経不順、不眠などに対する効果が報告されています。

更年期障害に対する効果

  • ホットフラッシュと発汗の軽減
    当帰芍薬散は、更年期におけるホットフラッシュや異常発汗などの自律神経症状を和らげる効果があるとされています。
  • 心の安定
    更年期障害に伴う情緒不安定やイライラ、不安感の緩和に役立つと考えられています。これは、当帰芍薬散が血を補い、肝の機能をサポートし、心を養う作用によるものです。
  • 睡眠の質の改善
    不眠に悩む更年期の女性において、睡眠の質を改善する効果があります。
  • 筋肉や関節の痛みの緩和
    更年期障害による筋肉や関節の痛み、肩こりに対しても、有効な場合があります。
②加味逍遥散(かみしょうようさん)

加味逍遥散は、ホットフラッシュ、多汗、イライラ、不眠など、肝気鬱結(ストレスなどによる肝の機能低下)に関連する症状に効果的です。気分を落ち着かせ、ストレスを和らげる作用があります。肝を養い、気の巡りを改善し、血を補うことで、体内の調和を取り戻すことを目的としています。

更年期障害に対する効果

  • 情緒不安定とストレス
    加味逍遥散は、イライラや不安、抑うつといった情緒的な症状を緩和する効果があります。これは、肝の機能をサポートし、気の巡りをスムーズにすることにより、心の安定を図る作用によるものです。
  • ホットフラッシュの軽減
    ホットフラッシュ更年期障害の代表的な症状であるホットフラッシュや発汗に対しても、加味逍遥散は一定の効果を示すと報告されています。
  • 睡眠障害
    更年期における不眠や睡眠の質の低下に対しても、加味逍遥散が効果的であることが示されています。これは、心を養い、精神を安定させることで、より良い睡眠を促すためです。
  • その他の症状
    更年期障害に伴う頭痛やめまい、倦怠感などにも、加味逍遥散が有効であるとされています。
③桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、主に体内の水分代謝を調整し、血の巡りを良くすることを目的としています。更年期障害において、桂枝茯苓丸が有効であると考えられる主な理由は、更年期に起こりやすい体内の不調和や水分代謝の乱れを整え、ストレスによる影響を緩和するためです。

更年期障害に対する効果

  • むくみの緩和
    桂枝茯苓丸は、体内の余分な水分を適切に排出することにより、更年期によく見られるむくみを緩和する効果があります。
  • ホットフラッシュと発汗の調整
    体内の水分代謝と血の巡りを改善することで、ホットフラッシュや過剰な発汗といった更年期特有の症状を緩和することが期待できます。
  • 不安やイライラの緩和
    桂枝茯苓丸は、ストレスによる身体的な緊張を和らげ、不安やイライラといった情緒的な症状を緩和する作用があります。
  • 睡眠の質の改善
    更年期障害に伴う不眠に対しても、桂枝茯苓丸は有効であるとされています。体内のバランスを整えることで、安定した睡眠を促す効果が期待できます。

3.プラセンタ

プラセンタ(胎盤エキス)治療は、更年期障害の症状緩和を目的とした治療の一つとして使用されることがあります。プラセンタには、ヒト胎盤から抽出された成分が含まれており、その成分はホルモン様作用を持つとされ、エストロゲンの低下による更年期障害の症状の一部を緩和すると考えられています。

更年期障害におけるプラセンタの働き

  • ホルモンバランスの調整
    プラセンタには、エストロゲン様作用を有する成分が含まれているとされています。これにより、更年期におけるエストロゲンの減少に伴うホルモンバランスの乱れを緩和し、ホットフラッシュ、不眠、イライラといった症状を軽減することが期待されます。
  • 免疫機能のサポート
    プラセンタは免疫系を調整する作用があるとも言われており、これにより全体的な健康状態の向上に寄与する可能性があります。
  • 細胞の修復と再生
    成長因子を含むプラセンタは、身体の細胞修復や再生を促進するとされ、老化防止や体力の回復、皮膚の状態改善などに効果があると考えられています。
  • 疲労感の軽減
    プラセンタに含まれるアミノ酸やビタミンなどの栄養素が、疲労回復を助け、エネルギーレベルの向上に寄与する可能性があります。

4.生活習慣の改善

更年期障害の症状を緩和させるためには、日常生活の中でいくつか健康的な習慣を取り入れることが効果的です。更年期障害を改善させるために以下の生活習慣を参考にしてみてください。

①健康的な食生活
  • バランスの取れた食事
    野菜、果物、全粒穀物、良質のたんぱく質(魚、豆腐、豆類)、健康的な脂肪(オメガ3脂肪酸を含む魚、ナッツ、オリーブオイル)を多く含む食事を心がけます。
  • カルシウムとビタミンDの摂取
    骨密度の維持に重要です。乳製品、緑黄色野菜、カルシウム強化食品、サプリメントなどから摂取しましょう。
  • 大豆製品の摂取
    イソフラボンを含む大豆製品は、エストロゲン様作用があるとされ、ホットフラッシュの緩和に役立つ可能性があります。
  • 禁煙と節度あるアルコール摂取
    喫煙は更年期障害の症状を悪化させることがあります。また、アルコールは適量に留め、過剰摂取は避けましょう。
  • カフェインの摂取を控える
    夜間のカフェイン摂取は睡眠の質に影響を与えることがあるため、特に午後は控えめにします。
②規則正しい運動
  • 定期的な運動
    週に数回、中強度の運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)を行うことで、ストレスの軽減、睡眠の質の向上、骨密度の維持に効果があります。
  • ストレスマネジメント
  • リラクゼーション
    深呼吸、瞑想、ヨガ、太極拳などのリラクゼーションを習慣にすることで、心の安定とストレスの緩和を図ります。
  • 禁煙と節度あるアルコール摂取
    喫煙は更年期障害の症状を悪化させることがあります。また、アルコールは適量に留め、過剰摂取は避けましょう。
  • 十分な休息と睡眠
    良質な睡眠を確保するために、就寝前のルーティンを確立し、寝室の環境を整えます。

 


 

更年期障害のよくある質問

更年期障害かなと思ったらどうしたらいいですか?

更年期障害の症状を感じた際は症状を記録してみましょう。ホットフラッシュ、睡眠障害、情緒不安定、関節痛、性欲の変化など、具体的な症状とその影響を記録してみてください。更年期障害の症状が生活に影響を及ぼし始めたら、婦人科医に相談しましょう。症状の評価、他の疾患ではないかなどを検討し、症状に合わせた適切な治療法を提案します。

更年期障害の三大症状は?

更年期障害の三大症状はホットフラッシュ、いらいら、身体のだるさ(倦怠感)が挙げられます。これらの症状は、更年期におけるエストロゲンの減少によって引き起こされると考えられています。しかし、更年期障害はこれらの症状に限らず、さまざまな身体的、心理的変化をもたらすため、個人差が大きいことが特徴です。

  1. ホットフラッシュ
    突然の体温上昇と発汗、顔のほてりを感じる症状です。
  2. 情緒不安定
    理由なく気分が変わりやすく、イライラしたり落ち込んだりする症状です。
  3. 倦怠感
    体のだるさや疲れが取れにくい状態で、特に何かをしたわけでなくとも感じる疲労感が出現することがあります。

更年期かどうか調べる方法はありますか?

更年期症状の有無と更年期の診断をはっきりさせるために、血液検査を行います。
更年期には、卵巣の機能が低下し、エストロゲンとプロゲステロンの生産が減少します。この変化に対応して、脳下垂体はFSHとLHの両方をより多く分泌しようとします。そのため、血中のFSHおよびLHレベルが上昇するのが一般的です。特にFSHのレベルがLHのレベルよりも顕著に上昇する傾向がありますが、LHも重要な指標となります。

1. LH(黄体形成ホルモン)

更年期に入ると、卵巣からのエストロゲンとプロゲステロンの生産が減少します。これに反応して、脳下垂体はLHの分泌を増やします。LHの数値が高いと更年期障害の可能性が高くなります。

2. FSH(卵胞刺激ホルモン)

FSHはエストロゲンの減少に対応して、FSHの数値が上昇します。FSHの数値が一定の上昇がみられれば、更年期に移行している可能性が高くなります。

3. エストラジオール

エストラジオールは、卵巣が生産する主要なエストロゲンです。更年期に入ると、エストラジオールのレベルは低下します。この低下は、更年期に関連する多くの症状の原因となるため、エストラジオールの測定は更年期の診断に役立ちます。

更年期障害の女性で食べてはいけないものは何ですか?

更年期障害の女性が避けるべき食品は、症状を悪化させる可能性があるものです。個人差はありますが、以下のような食品に注意をしてみましょう。

1. カフェイン

コーヒー、紅茶などに含まれるカフェインは、ホットフラッシュを悪化させる可能性があります。また、カフェインは睡眠障害の原因となることもあるため、特に夕方以降の摂取には注意が必要です。

2. アルコール

アルコールは体を温める作用があり、ホットフラッシュの頻度や強度を増加させる可能性があります。また、睡眠の質を下げたり、情緒不安定を引き起こしたりすることもあるため、節度ある摂取が重要です。

3. スパイシーな食べ物

辛い食べ物は体温を上げ、ホットフラッシュを誘発または悪化させることがあります。辛さの感じ方には個人差がありますが、症状が気になる場合は控えめにすることをお勧めします。

4. 高脂肪・高糖分の食品

高脂肪・高糖分の食品は、体重増加のリスクを高めます。更年期には代謝が落ちるため、体重管理が難しくなりがちです。また、不健康な体重増加はホットフラッシュを悪化させる可能性があります。

健康的な食生活の重要性

更年期障害の症状を管理するためには、バランスの取れた食生活が重要です。野菜、果物、全粒穀物、良質のタンパク質(魚、豆腐など)、植物性の脂肪分を摂取し、十分な水分を確保することを心がけましょう。

 


 

お問い合わせ

お問い合わせ当院では、婦人科専門医により更年期障害の診察や治療にも力を入れております。些細なことでもかまいませんので、なにか気になることがありましたらお気軽に当院へお越しください。

文責:東海内科・内視鏡クリニック岐阜各務原院 仙波 恵樹

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    :内科外来 :婦人科外来 :内視鏡検査
    ※:日曜内視鏡検査(月1回診療(9:00~12:00、13:00~16:00))
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    上部内視鏡検査は診療日の午前中に毎日行っています。
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