体重減少

以下のような方は要注意です。

体重減少

  • 食事はしっかり食べているのに痩せていく。
  • 食欲がわかずに食べられない。
  • 生活は変わらないのに半年間で5kg以上減った。

体重減少は、意図的なダイエットや生活習慣の変更によるものである場合もあれば、健康上の問題が原因である場合もあります。意図せずに体重が減少する場合は、なにかの病気が隠れている可能性があるため注意が必要です。

目次

 

 


 

体重減少を起こす疾患

体重減少を起こす疾患は下記のものがあります。

がん

進行したがんは、体重減少を引き起こすことがあります。がんによる体重減少は、がん性悪液質とも呼ばれます。単に食欲不振によるカロリー摂取の不足だけでなく、がんとその治療が体の代謝に与える影響によっても引き起こされます。主な原因は以下の通りです。

1. 炎症性サイトカインの増加

がん細胞は、炎症を促進するさまざまな化学物質(サイトカインや腫瘍壊死因子など)を放出します。これらの物質は、食欲減少や筋肉と脂肪組織の分解を促し、体重減少に繋がります。

2. 食欲不振

がん自体の悪化や治療の副作用(化学療法、放射線療法)によって食欲が低下することがあります。また、消化器系のがんでは、物理的に食事の通過が困難になることもあります。

3. 消化と吸収の問題

消化器系のがんは、食物の消化や栄養素の吸収を妨げることがあります。この結果、体重減少に繋がります。

4. 筋肉量の減少

がん性悪液質は筋肉量の減少が特徴的で、筋肉量の減少は医学的にサルコペニアと呼ばれます。筋肉はエネルギーの主要な貯蔵庫の一つであるため、その減少は体重減少を引き起こします。

 

対処法

がんによる体重減少(がん性悪液質)に対する対処はがんによる進行具合にもよりますが、基本的には栄養運動を見直し、場合によっては薬物療法を用いながら全身的な健康状態を改善する必要があります。がんに対する治療も適切に行っていく必要があります。以下に、主な対処法を紹介します。

1. 栄養療法

栄養状態の改善を図るため、高カロリー・高タンパク質の食事を心がけます。食欲がない場合は、小分けにして少量ずつでも頻繁に食事をとるようにします。

  • 栄養補助食品
    必要に応じて、栄養補助飲料やサプリメントを利用してカロリーとタンパク質の摂取を増やします。

2. 薬物療法

がん性悪液質の治療薬は、ステロイド製剤などが中心に用いられてきました。現在はアナモレリンなどのグレニン様作用薬も使用されます。

  • 食欲増進薬
    がん性悪液質で食欲が低下している場合は、ステロイド(プレドニゾロンなど)、アナモレリンが食欲を増進させる可能性があり、体重減少を抑えることがあります。
  • 炎症を抑制する薬
    非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や、特定の標的療法薬が炎症反応を抑えることで体重減少を緩和することがあります。
  •     
  • 漢方薬
    体力の低下や食欲の低下に対して補中益気湯人参養栄湯などの漢方薬が使用されます。

3. 運動療法

軽度から中等度の運動: 筋肉量の減少を防ぎ、全体的な健康状態を改善するために、適度な運動が推奨されます。

がんによる体重減少は、生存率や生活の質に影響を与える可能性があるため、体重が減少しないように治療の中で適切に管理することが重要です。

甲状腺機能亢進症(Hyperthyroidism)

甲状腺機能亢進症は、甲状腺が過剰にホルモンを産生し、体内の代謝が異常に高まる状態です。甲状腺ホルモンは体の代謝に大きく関与しており、その過剰な分泌で体重減少を起こします。

主な原因

甲状腺機能亢進症の原因としては、以下が挙げられます。

  1. バセドウ病
    自己免疫疾患で、最も一般的な原因。甲状腺を刺激して過剰にホルモンを産生させます。
  2. 甲状腺腫
    甲状腺内に良性の腫瘍が形成され、過剰なホルモンを産生することがあります。
  3. 亜急性甲状腺炎
    甲状腺が炎症を起こし、一時的に甲状腺ホルモンが血中に放出されることがあります。

症状

甲状腺機能亢進症は、体重減少の他に以下の症状を伴うことがあります。

  1. 心拍数の増加、動悸
  2. 発汗過多、熱耐性の低下
  3. 疲労感、筋力の低下
  4. 緊張感、イライラ
  5. 睡眠障害
  6. 手の震え
  7. 女性では月経不順

診断と治療

甲状腺機能亢進症の診断は、血液検査甲状腺エコー検査を行います。これにより、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の数値と、甲状腺ホルモン(T3、T4)の数値を測定します。また甲状腺エコー検査では、甲状腺の腫大や結節の有無を調べます。甲状腺機能亢進症の原因によりそれぞれ治療が異なるため、しっかりとした診断が大事です。

糖尿病

糖尿病による体重減少は、特に1型糖尿病でよく見られますが、2型糖尿病でも血糖管理が不適切な場合に起こることがあります。

その主な理由は次の通りです:

1. インスリン作用の不足

インスリンは、血糖を細胞内に取り込み、エネルギーとして使用するために必要なホルモンです。糖尿病ではこのインスリンの作用が十分に行われないため、血液中のブドウ糖が細胞に十分に取り込まれず、エネルギーとして利用されません。この結果、体は代わりに脂肪と筋肉を分解してエネルギーを得ようとし、それが体重減少の原因となります。

2. 過剰な尿と水分の損失

高血糖状態が続くと、腎臓は血液中の余分なブドウ糖を排出しようとします。これにより、尿としてブドウ糖が排出される過程で水分も一緒に失われ(多尿)、体内の水分バランスが崩れます。水分の大量損失は、体重減少につながります。

3. 栄養素の不足

インスリン不足により細胞がブドウ糖を適切に利用できないため、体は十分なエネルギーを得られていない状態になります。その結果、食事から摂取されたカロリーが効率的にエネルギー源として使われず、栄養不足に陥りやすくなります。これも体重減少に寄与します。

4. ケトーシス

特に1型糖尿病では、体が十分なインスリンを生産できず、エネルギー源として脂肪を分解することで生じるケトン体を利用することがあります。これはケトーシスと呼ばれる状態で、脂肪の分解が加速されると体重が減少します。

診断と治療

糖尿病による体重減少を防ぐためには、血糖値を適切に管理し、バランスの取れた食事、定期的な運動、必要に応じて薬物療法を行うことが重要です。診断は血液検査で診断をつけることができます。

消化器系の疾患

潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病、消化管のがんなど、食物の消化や吸収に影響する疾患が体重減少の原因になることがあります。

慢性的な感染症

HIV/AIDSや結核などの感染症は、体重減少を引き起こすことがあります。

1. 代謝の増加

結核やHIVなどの感染は体内での炎症反応を引き起こし、この炎症反応によって体の代謝率が上昇します。免疫システムが感染と戦うためには追加のエネルギーが必要となり、これが体重減少の一因となります。

2. 食欲不振

感染症は発熱、夜間の発汗、慢性的な咳などの症状を引き起こし、これらの症状が食欲減退につながることがあります。食欲がないために十分な栄養が摂取できず、体重が減少します。

3. 蛋白質エネルギー栄養失調

感染症による慢性的な炎症は、体内での蛋白質の消費を増加させ、筋肉量の減少を引き起こすことがあります。これは蛋白質エネルギー栄養失調と呼ばれ、体重減少の重要な要因となります。

診断と治療

感染症の原因は血液検査やレントゲン検査、CT検査などを行い総合的に判断されます。治療はそれぞれの感染症の原因によって異なります。

慢性閉塞性肺疾患、COPD

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性的な気道の炎症と肺の損傷が特徴で、長期にわたる喫煙が最も一般的な原因です。COPDは呼吸困難、咳、痰の産生などの症状を引き起こし、進行するにつれて日常活動が困難になることがあります。COPDに伴う体重減少は、疾患が進行するとよく見られる症状の一つで、いくつかの要因によって引き起こされます。

1.COPDと体重減少の関連要因

エネルギー消費の増加

COPD患者は、呼吸の努力が通常よりもはるかに大きくなるため、基礎代謝率が上昇し、より多くのエネルギーを消費します。特に重度のCOPDでは、呼吸筋の仕事量が増えるため、体重減少が顕著になることがあります。

食欲不振

COPD患者は、息切れや全身の疲労感により食欲が低下することがあります。また、呼吸困難によって食事の摂取が物理的に困難になることもあります。

炎症

COPDには慢性的な炎症が伴い、これが全身的なエネルギー消費の増加につながることがあります。

2.診断と治療

COPDの診断は、通常、患者の症状、喫煙歴、身体検査、および以下の検査に基づいて行われます。

スパイロメトリー

肺機能検査で一般的に行われている検査です。肺の空気の吹き出し速度(FEV1)と吹き出される空気の総量(FVC)を測定します。FEV1/FVC比の低下はCOPDの典型的な徴候です。

胸部X線

肺気腫の徴候や他の肺疾患(例:肺がん、結核)を検出するのに役立ちます。

CTスキャン

胸部レントゲン検査より、さらに詳細な肺の画像を撮影できます。肺気腫の存在や肺がんのスクリーニングに有用です。

血液検査

アルファ1-アンチトリプシン欠乏症(遺伝性のCOPDの一形態)を検出するために行われることがあります。

動脈血ガス分析

進行したCOPD患者で、酸素飽和度と二酸化炭素レベルを測定します。

3.COPDの治療

COPDの治療は、症状を管理し、疾患の進行を遅らせることを目的としています。根本的な治療はありませんが、進行を遅らせるなどの目的で下記の治療を行います。

禁煙

COPDの進行がこれ以上進行しないように禁煙が重要です。

吸入薬

長時間作用型の気管支拡張薬(LABA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)、ステロイドを含む吸入薬が症状の緩和に役立ちます。

うつ病や不安障害

うつ病は心の病としてよく知られており、気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、エネルギーの低下など様々な症状を引き起こします。精神的な健康問題は、食欲不振や体重減少につながることがあります。

フレイル

フレイルとは、加齢に伴い生じる身体的、心理的、社会的に脆弱な状態を指します。簡単にまとめると、高齢になり体力、精神力が衰えてしまい、食欲や運動能力、思考力が低下してしまっている状態です。フレイルは、寝たきり予備軍と考えられており、転倒、入院、介護依存度の増加など、さまざまな健康問題のリスクを高めます。

フレイルの主な特徴

  • 身体的フレイル:
    筋力の低下、疲労感、活動レベルの低下、歩行速度の遅さ、無意図的な体重減少などが含まれます。
  • 心理的フレイル:
    認知機能の低下、うつ症状、意欲の減退など、心理的な側面の脆弱性が含まれます。
  • 社会的フレイル:
    社会的な孤立、支援ネットワークの不足、社会参加の減少などが含まれます。

フレイルの診断基準

フレイルの一般的な診断基準には、Friedのフレイル基準があり、以下の5項目が挙げられます:

  1. 疲労感
  2. 筋力の低下(握力の低下など)
  3. 体重減少(過去1年間に体重の5%以上の無意図的な減少)
  4. 歩行速度の低下
  5. 低活動性

これらの基準のうち3つ以上に該当する場合、フレイルと診断されます。

フレイルの予防と管理

フレイルの予防と管理には、積極的なライフスタイルの変更が推奨されます。具体的には、栄養の改善、定期的な運動、社会的活動への参加、十分な休息とストレス管理を行いましょう。早い段階で体力、精神力の低下に気づき、早期に予防を開始すれば予防することができます。


体重減少の原因を調べるために

体重減少の原因を調べるために体重減少の原因がわからない場合は、医師に相談して詳細な診断を受けることが重要です。

原因検索のアプローチ

体重減少の原因を特定するためには、総合的な内科診療が必要です。
診療では以下のような項目を診ていきます。

  1. 詳細な病歴の聴取:
    食欲、食事の量、運動量、最近のストレスや生活環境の変化など。
  2. 身体検査:
    全身の健康状態、特に甲状腺の異常や消化器系の問題を評価。
  3. 血液検査:
    血球検査(CBC)、甲状腺機能検査(TSH、T3、T4)、血糖値、腎機能検査、肝機能検査、栄養状態などを評価します。
  4. 尿検査:
    腎機能と代謝異常の指標として実施します。
  5. 画像検査:
    X線、CT、MRIなどで内臓の異常や腫瘍の有無を調べます。
  6. 内視鏡検査:
    胃カメラ検査や大腸カメラ検査など消化管内視鏡検査が行われます。
  7. 精神的評価:
    うつ病や摂食障害の兆候を評価します。

これらの診察や検査を通じて、体重減少の原因となる疾患を特定し、適切な治療方針を立てます。体重減少の原因は一つに限定されないことが多く、詳細な評価が必要で、原因よってはそれぞれの専門医による診察や検査が必要な場合があります。

 


 

問い合わせ

お問い合わせ東海内科・内視鏡クリニックでは地域の皆様の健康の不安を解決するために体重減少に対する診察を行っています。体重減少には重大な病気が隠れていることがあります。少しでも気になることがございましたら、お気軽に当院へご相談ください。

文責:東海内科・内視鏡クリニック岐阜各務原院 院長 神谷友康

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