ダイエットで抜け毛が増えた
「体重は落ちてきたのに、シャンプーのたびに排水口が怖い」
「ブラシに付く毛の量が急に増えた」
ダイエット中の脱毛(抜け毛増加)は、珍しいことではありません。多くは休止期脱毛という、一時的な脱毛パターンで起こります。適切に食事を立て直すと、時間はかかっても改善が見込めるケースが多いです。
この記事では、ダイエットで起こる脱毛に対して、「栄養療法」として何を優先すべきかを、実践しやすい形でまとめます。
ダイエット脱毛の正体は「休止期脱毛」が多い
休止期脱毛は、体に強い負荷(ストレス)がかかったあとに、髪の成長サイクルが乱れて起こるびまん性(全体的)の抜け毛です。
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きっかけ(ストレス)から 2〜3か月後に抜け毛が増えやすい
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急性の脱毛は 6か月未満で、原因を整えると多くが自然に改善へ向かう
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原因への対処後、6〜8か月で落ち着くことが多い(個人差あり)
急激なダイエットを始めてから3〜4か月後に抜け毛が目立つとされています
「分け目が急に広がった」「全体の毛量がスカスカに見える」一方で、頭皮は基本きれい(赤み・かゆみ・痛みが少ない)という特徴もあります。
なぜダイエットで髪が抜けるの?(よくある3つの理由)
“急激な減量”そのものが強いストレスになる
急速な体重減少や極端な制限食は、休止期脱毛の誘因になり得ます。臨床情報でも「急激な減量」「極端・制限的ダイエット」を避けるよう推奨されています。
脱毛を防ぐためには、1か月で減量させる体重は-1 ~ -3kg程度にとどめましょう。
摂取エネルギー不足(=カロリー不足)
髪は「生命維持の最優先」ではないため、エネルギー不足が続くと後回しにされやすい領域です。ダイエットの“やりすぎ”が続くと、毛根の活動が落ちやすくなります。
タンパク質や微量栄養素の不足
急な体重減少やタンパク質摂取の低下が、脱毛に関与し得ることが整理されています。
加えて、鉄・亜鉛などの不足が重なると、抜け毛の「長期化」「回復の遅れ」につながることがあります(不足の有無は検査で確認が確実です)。
ここまでのまとめ
【一番重要】急激なダイエットで抜け毛を起こさないように、まずは「体重の減らし過ぎ」を止める。
1か月で減量させる体重は多くてもマイナス3kg程度にとどめる。
極端な食事制限をやめて、タンパク質や亜鉛、鉄、ビタミンなどをしっかり摂取する。
栄養摂取について
脱毛を防ぐために栄養摂取は重要です。
まず食事の基本事項として、以下のことを守りましょう。
【基本事項】
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1日3回は少ない量でも必ずきっちり食べる。
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極端なカロリー制限はしない。
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髪の毛に必要な栄養素をしっかり食べる。
髪のために栄養のポイント
髪の毛のための栄養摂取のポイントとして以下のことを気を付けましょう。
たんぱく質:毎食“必ず”入れる
髪の主成分はたんぱく質(ケラチン)なので、ダイエットで主菜が減ると影響が出やすいです。
食べ物の例

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肉:鶏むね、豚ヒレ、牛赤身
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魚:鮭、さば、あじ、まぐろ
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卵、ヨーグルト・チーズなど乳製品
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大豆:豆腐、納豆、豆乳、枝豆
これらの食材を毎食1品は必ず食べるように意識しましょう。
鉄:特に女性は要注意(不足しているかどうかは検査で確認)
鉄不足は毛のトラブルと関連が議論されており、鉄欠乏のリスク(生理、食事制限、菜食寄りなど)がある人は要チェックです。
食事での鉄の取り方
動物性(吸収されやすい):赤身肉、レバー、貝類
植物性:豆類、ほうれん草 など
亜鉛:不足も過剰もNG
亜鉛は細胞分裂やタンパク合成などに関与する必須ミネラルで、不足リスクがある人(偏食、極端な制限、吸収不良など)は食事の見直し対象です。
摂りすぎは危険
一方で、過剰摂取は有害です。成人の亜鉛摂取の上限は40mg/日で、50mg以上を数週間続けると銅吸収阻害などが起こり得る、と整理されています。
亜鉛の推奨摂取量
日本の「食事摂取基準(2025年版)」では成人の亜鉛推奨量は年齢・性別で少し違います。
30〜64歳:男性 9.5mg/日、女性 8.0mg/日
18〜29歳:男性 9.0mg/日、女性 7.5mg/日
食材例

実用的な食材を「亜鉛が多い順」に並べると
100gあたりの亜鉛量は、だいたいこの順番です。
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かき(養殖・生):14.0mg/100g
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牛もも赤身(生):4.1mg/100g
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豚ヒレ(焼き):3.6mg/100g
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しじみ(生):2.3mg/100g
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納豆:1.9mg/100g
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さば(焼き):1.4mg/100g
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鶏卵(全卵・生):1.1mg/100g
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木綿豆腐:0.6mg/100g
結論を言うと、「かき > 牛赤身 > 豚ヒレ」の順番で亜鉛が含まれています
脂質:ゼロにしない(特に良質な脂を確保)
ダイエットで脂質を極端に削ると、食事全体が“栄養の薄い構成”になりがちです。髪・皮膚・ホルモン面でも、脂質はゼロにしないのがよいです。
食材例
青魚、ナッツ、オリーブオイル、アボカド など
ビオチン
ビオチン(B7)は欠乏で脱毛が起こり得ますが、一般的には食事で足りている人も多い栄養素です(成人の目安量は30µg/日)。
ビオチンの欠乏が疑われる場合は補充をすると効果的です。
まとめ
ダイエット中の抜け毛は、多くが一時的な休止期脱毛で、原因(急激な減量、摂取不足、欠乏)を正すことが重要です。
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極端な制限をやめる(“普通に栄養が入る減量”へ)
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毎食のたんぱく質を取り入れる
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鉄・亜鉛・ビタミンDは「不足の有無」を意識
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ビオチンは不足すると脱毛の原因となる。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療の代替ではありません。持病、妊娠中、服薬中、急激な体重減少、症状が強い場合は、医師・管理栄養士にご相談ください。
関連ページ
【ブログ】ダイエットの食事療法について
この記事を書いた人

神谷 友康
「医は仁術」
消化器系を中心に内科領域全般を診療しています。
医学をみなさんの日常生活でお役に立てる内容で発信したいと思っています。
資格
日本内科学会総合内科専門医、消化器内視鏡専門医、消化器病専門医など
経歴
愛知医科大学医学部医学科卒業
名古屋セントラル病院消化器内科レジデント
東海学院大学食健康学福祉部講師
名古屋セントラル病院消化器内科医長
愛知県がんセンター病院内視鏡部医長
東海内科・内視鏡クリニック 岐阜各務原院院長