はじめに
「最近お通じが悪くて…」そんな悩みを抱えていませんか?
便秘は多くの方が経験する身近な症状ですが、放っておくと腹痛や肌荒れ、さらには大腸の病気の原因にもなりかねません。今回は消化器内科の専門医が、日常生活や食事の工夫による便秘の改善方法をわかりやすく解説します。
【便秘は高血圧・脳卒中・心筋梗塞のリスクにも】
便秘は単なるお腹の不調にとどまらず、全身の血管系の病気(循環器疾患)に影響を及ぼすことがあります。
● いきみが血圧を急上昇させる
便秘の人は排便時に強く「いきむ」ことが多く、この動作は一時的に血圧を大きく上昇させます(バルサルバ効果)。
短時間で収縮期血圧が30〜50mmHg以上上昇することも
高血圧の方や血管が脆くなっている高齢者では、脳出血や脳梗塞のリスクが高まります
● 脳卒中や心筋梗塞の引き金になることも
強い腹圧や息こらえは、心臓や脳に負担をかけます。
排便時のいきみがきっかけで心筋梗塞を起こすケースも報告されています。
また、脳卒中(脳出血・脳梗塞)の誘因となることもあり、特に高血圧や動脈硬化がある方は要注意です。
● 慢性便秘は生活習慣病の一部とも言える
便秘の背景には食生活の乱れ、運動不足、水分不足などが関係しており、これらは高血圧や動脈硬化と共通のリスク因子でもあります。つまり、便秘は単独の問題ではなく、生活習慣病の「表れ」としてとらえるべき症状なのです。
便秘とは? 医学的な定義と分類
便秘とは、「排便が週に3回未満」または「排便時に強い力みや残便感がある状態」が継続していることを指します。大きく以下の2つに分類されます。
機能性便秘:生活習慣や食事、ストレスなどが原因
器質性便秘:腸の病気や腫瘍、薬の副作用が原因
この記事では、多くの方が当てはまる「機能性便秘」の薬に頼らない改善方法について解説します。
日常生活でできる便秘対策
POINTは4つです。
- ● 規則正しい生活習慣を心がける
- ● 適度な運動を取り入れる
- ● 排便のサインを無視しない
- ● 食事の内容を気を付ける。
① 規則正しい生活習慣を心がける
腸は「自律神経」によって動いているため、不規則な生活やストレスは腸の働きを鈍らせます。
よって以下の点に気を付けましょう。
・ 毎朝同じ時間に起きて、必ず朝食を食べる。
・ 十分な睡眠(6〜8時間)を確保する
・ 排便の「リズム」を作る(例:毎朝トイレに座る習慣)
② 適度な運動を取り入れる
運動不足は腸の動きを鈍らせる原因です。
ウォーキングやストレッチ、軽い体操を毎日15~30分
腹筋を鍛えることで排便力も向上します。
③ 排便のサインを無視しない
「トイレに行きたい」と感じたら我慢せず行くことが大切です。我慢を続けると「便意」が鈍くなります。
便意が鈍くなり「直腸性便秘」と呼ばれる状態となってしまいますので気を付けましょう。
【食事で腸内環境を整えるポイント】
1. 食物繊維を積極的にとろう
食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があり、バランスよく取り入れるのがコツです。
便のかさを増やし、腸の動きを促進します。
不溶性食物繊維は食べすぎると逆に便秘になる可能性があります。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方をバランスよく食べるようにしましょう。
2. 発酵食品で善玉菌を増やす
腸内環境のバランスを整えるには善玉菌が大切です。
善玉菌はヨーグルト、キムチ、ぬか漬け、みそ、納豆などの食品に含まれています。
■ どんな食べ方がおすすめ?
ヨーグルト → 食後に食べると菌が生きたまま腸に届きやすい
納豆 → 朝ごはんに1パック!食物繊維の多い食材(めかぶ・オクラ)と一緒に食べると◎
ぬか漬け・キムチ → 野菜の食物繊維と乳酸菌のダブル効果!
■ 注意点
食べすぎはお腹が張ったり下痢になることもあります
1日1~2品くらいを毎日少しずつ取り入れるのがコツです!
3. 水分補給を忘れずに
便が硬くなるのを防ぐには水分が不可欠です。
1日あたり1.5〜2Lを目安に
朝起きたらコップ1杯の水を飲むと腸の刺激に◎
【便秘によい食材まとめ】
まとめ
便秘は多くの方が悩む症状ですが、生活習慣や食事の見直しによって改善できることも少なくありません。日々のちょっとした意識が、腸の健康を守る第一歩です。
●それでも改善しない場合
それでも改善しない場合は、無理をせず専門医へご相談ください。
当院では便秘の診断・治療を専門とする消化器内科医が丁寧に対応しております。
この記事を書いた人
神谷 友康
「医は仁術」
消化器系を中心に内科領域全般を診療しています。
医学をみなさんの日常生活でお役に立てる内容で発信したいと思っています。
資格
日本内科学会総合内科専門医、消化器内視鏡専門医、消化器病専門医など
経歴
愛知医科大学医学部医学科卒業
名古屋セントラル病院消化器内科レジデント
東海学院大学食健康学福祉部講師
名古屋セントラル病院消化器内科医長
愛知県がんセンター病院内視鏡部医長
東海内科・内視鏡クリニック 岐阜各務原院院長