潰瘍性大腸炎|炎症性腸疾患の症状は東海内科・内視鏡クリニック 岐阜各務原院

潰瘍性大腸炎

当院では潰瘍性大腸炎をはじめとした炎症性腸疾患の診療をおこなっております。5-ASA製剤を基本として、免疫調整剤や抗TNFα抗体製剤などの生物製剤の治療にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

目次

このような症状は潰瘍性大腸炎の可能性があります。

このような症状は潰瘍性大腸炎・クローン病の可能性があります
  • 激しい腹痛
  • 下腹部の違和感
  • 1日に何度も下痢になる
  • 下痢が長期間続く
  • 便に白いものが混じる
  • 便に血液が混じる・血便
  • 排便の最後に血が出る

上記は、潰瘍性大腸炎によくある症状です。潰瘍性大腸炎は普通の腸炎とは違い、自然と治ることは少なく、一時的には症状が緩和していてもまたすぐに再燃してしまいます。適切な治療が必要で、時に深刻な合併症を起こし、死亡する可能性もある疾患です。疑わしい症状がある場合には、できるだけ速やかに消化器内科を受診することをお薦めします。


潰瘍性大腸炎について

 - 徐々に患者が増えてきています。

日本では1990年代以降、急激に患者数が増えてきています。潰瘍性大腸炎は、慢性的な下痢や下血、腹痛などの症状で発症することが多いです。発症の初期は通常の細菌性腸炎などと判断が難しい場合があり、長い間下痢が続いているのに、正確な診断がされず、病気が放置されるといったケースも珍しくはありません。

 - 潰瘍性大腸炎は難病指定の病気です

潰瘍性大腸炎は難病指定がされている疾患で中等症以上の方は医療費補助が受けられます。

 - 潰瘍性大腸炎の原因

潰瘍性大腸炎(UC: Ulcerative Colitis)の原因は完全には解明されておらず、複数の要因が組み合わさって発症すると考えられています。主な要因としては、遺伝的素因、環境因子、免疫系の異常、腸内フローラのバランスの乱れが挙げられます。

  • 遺伝的要因
  • 潰瘍性大腸炎には家族歴が関連することがあり、特定の遺伝子変異がリスクを高めるとされています。全ゲノム関連解析(GWAS)などの研究により、UCの発症に関わる複数の遺伝子が同定されています。
  • 環境因子
  • 食生活の変化、衛生条件の向上、喫煙、特定の薬剤(非ステロイド性抗炎症薬など)の使用など、様々な環境因子がUCの発症リスクと関連している可能性があります。
  • 免疫系の異常
  • UCは、自身の免疫系が、炎症を引き起こすと考えられています。この炎症が慢性化し、腸の内壁に潰瘍や傷を生じさせます。
  • 腸内フローラのバランスの乱れ
  • 人間の腸内には数多くの微生物が存在し、健康維持に重要な役割を果たしています。UC患者では、腸内フローラのバランスが乱れ、有害な微生物が増加するなどの変化が観察されることがあり、これが炎症の原因になる可能性があると考えられています。

これらの要因は互いに影響を及ぼしあいながら、特定の個人で潰瘍性大腸炎を発症させると考えられています。しかし、これらの要因がどのように相互作用し、なぜ特定の人にのみ疾患が発症するのかについては、まだ多くの未解明の点があります。研究が進むことで、将来的にはより明確な原因が特定され、新たな治療法の開発につながることが期待されています。

 - 潰瘍性大腸炎は遺伝するか?

潰瘍性大腸炎(UC)と遺伝的要因の関係については、多くの研究が行われており、遺伝的要因がUCのリスクに関与していることが示唆されています。

遺伝的素因の研究
  • 家族歴
  • UCの患者には、同じ病気を持つ家族成員がいる場合が比較的多いです。家族歴がある患者は、そうでない患者に比べてUCを発症するリスクが高いことが報告されています。
  • 双生児研究
  • 双生児におけるUCの発症率を調査した研究では、一卵性双生児の間でUCの発症がより高い一致率を示すことが見られます。これは遺伝的要因がUCのリスクに重要な役割を果たしていることを示唆しています。
  • 全ゲノム関連解析
  • UCの発症リスクに関連する複数の遺伝子座が同定されています。例えば、HLA地域、IL23R、ATG16L1、SMAD3などの遺伝子がUCと関連していることが報告されています。
  • 遺伝子変異
  • 特定の遺伝子変異、特に免疫応答や腸のバリア機能に関わる遺伝子の変異が、UCの発症リスクを高めることが示されています。
潰瘍性大腸炎は遺伝的素因と環境要因が合わさって発症する

これらの研究結果は、遺伝的要因がUCの発症に寄与していることを示していますが、UCは複雑な多因子遺伝疾患であり、遺伝的要因だけでなく、環境要因も疾患の発症に重要な役割を果たしています。したがって、遺伝的リスクを持っていても必ずしもUCを発症するわけではなく、生活習慣や環境要因との相互作用が病気の発症に関わっていると考えられます。
遺伝や環境、食事、腸内細菌の異常などの様々な要因が関係し発症するとされています。

 - 潰瘍性大腸炎の症状

大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こす疾患で、数か月の単位で下痢や血便、腹痛などの症状が続きます。症状のある活動期・再燃期と症状のない寛解期を繰り返します。

 - 潰瘍性大腸炎の診断

潰瘍性大腸炎は初期では通常の腸炎と誤診されることも珍しくはありません。診断を難しくしている要因として、診断を確実に決定づける検査所見がないことが挙げられます。炎症性腸疾患は症状やこれまでの経過、大腸カメラの所見、病理検査結果、細菌培養検査などを総合的に診て最終的な診断をおこなっていきます。

 - 根本から治す治療はまだありません。

治療については根本的に完治をすることは難しい疾患です。治療の目標は炎症を落ち着かせ、寛解と呼ばれる状態をできるだけ長く維持する治療を行っていきます。
適切な治療を続け、コントロールできれば日常生活への支障を最小限にできます。しかしながら治療がうまくいかなかったり、治療を怠ったりすると大腸のすべてを切除する外科手術が必要となったり、最悪のケースでは死亡する可能性もある疾患です。大切なのは適切な専門医にかかり、早期に診断を受け、適切な治療を開始することです。

潰瘍性大腸炎の分類

潰瘍性大腸炎潰瘍性大腸炎は直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分類されます。炎症の範囲によって有効な薬が異なってきます。直腸炎型などでの直腸に炎症が限局している場合は肛門から薬をいれる注腸製剤や座薬が有効です。


定期的な大腸カメラ検査が大事です。

潰瘍性大腸炎と診断されたら年に1度は内視鏡検査を受けるようにしましょう。

 - (1) 症状が落ち着いていても炎症を起こしていることがあります。

潰瘍性大腸炎は下痢などの症状が落ち着いていても、実際内視鏡検査で粘膜を観察してみると、炎症を起こしていることがあります。そのような炎症の状態を把握するために便中カルプロテクチンを測定しますが、内視鏡検査でも炎症の具合を確認することは有用です。

 - (2) 潰瘍性大腸炎は大腸がんを発症することがあります。

潰瘍性大腸炎は大腸癌のリスクを高めます。定期的な大腸カメラ検査で大腸癌ができていないかを確認しましょう。


治療

POINT根本的な治療が難しいため、いかに良い状態(寛解期)を保つかが重要です。

潰瘍性大腸炎は症状のある活動期・再燃期には炎症をできるだけ短期間に抑える治療を行い、症状のない寛解期にも治療を継続することで良好な状態をできるだけ長く続けられるようコントロールします。
治療の基本は薬物療法です。しかし生活習慣の乱れやストレスが悪化の引き金になることもありますので気を付けましょう。

潰瘍性大腸炎の治療薬は、以下の薬を基本とします。

 - 5-ASA製剤

5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤は、潰瘍性大腸炎(UC: Ulcerative Colitis)の治療に用いられる抗炎症薬です。潰瘍性大腸炎は大腸の内壁に慢性的な炎症と潰瘍を生じる疾患であり、5-ASA製剤はその炎症を抑えることで、症状の軽減や寛解維持に役立ちます。

作用機序

5-ASA製剤は大腸内で直接的に作用し、炎症を引き起こす物質の産生を抑制します。具体的には、免疫系の活性化を抑えたり、プロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症性サイトカインの生成を阻害することによって、炎症反応を減少させます。

使用方法

5-ASA製剤は、発症部位や疾患の重症度に応じて、経口薬(錠剤や顆粒)や局所薬(坐薬や腸管内に直接投与する液体や泡)の形で使用されます。経口薬は全身への吸収が少ないため、副作用が比較的少ないとされますが、炎症が局所的に限定されている場合には、局所薬が効果的な場合もあります。 日本で広く使用されている5-ASA製剤には以下のものがあります。

メサラジン(Mesalazine)

商品名として一般的なもの

  • ペンタサ(Pentasa)
  • アサコール(Asacol)

メサラジンは潰瘍性大腸炎の治療における主要な5-ASA製剤であり、経口剤(錠剤、顆粒)、坐薬、注腸用の製剤があります。

サルファサラジン(Sulfasalazine)

サルファサラジンは、体内で5-ASAとサルファピリジンに分解されるプロドラッグです。サルファピリジンは腸内細菌によってさらに分解され、5-ASAが局所的に炎症を抑制します。サルファサラジンは特に腸と関節の炎症を抑える効果があり、潰瘍性大腸炎や関節リウマチの治療に使用されることがあります。

 - ステロイド製剤

状態が悪化したとき(活動期)に選択される薬剤です。良い状態(寛解)を保つ効果はないので、状態が改善したらなるべく速やかに薬を減量していきます。
ステロイドが効かないステロイド抵抗性の方やステロイドをやめるとすぐに再燃してしまう方もみえるので、その際は別の治療を追加します。
長期にわたるステロイド製剤の使用は、糖尿病や骨粗しょう症、白内障など様々な副作用が起こるリスクとなります。可能な限り使用する量を減らすように治療を行っていくことが重要です。

 - 免疫調整薬

免疫調整薬はステロイドが効きにくい方や、すぐに再燃してしまう場合に5-ASA製剤に追加して投薬することが多い薬剤です。アザチオプリンなどのチオプリン製剤が使用されます。効果がでてくるのに3か月程度時間がかかります。治療効果や副作用には個人差があり、投与の初期は慎重に投薬を開始していきます。NUDT15遺伝子型によっては副作用が強く出る場合があり、高度の白血球減少や脱毛などがでることがあります。 日本人ではNUDT15遺伝子型はArg/Arg、Arg/Hisが多く8割程度ですので、副作用が発現する確率は低いと考えられます。しかし1%程度の方でCys/Cys型の方は副作用が必発のため、服用ができません。初めて免疫調整剤を服用する方はNUDT15遺伝子型の検査を行うことが必要です。

 - 生物学的製剤

抗TNFα抗体製剤などの薬剤で、寛解の維持や活動期の炎症を抑える治療に使われます。治療の主役になりつつある製剤で、主に注射剤が中心となります。

抗TNF-α抗体製剤

炎症を引きおこすサイトカインという物質を抑制することで、腸への炎症を抑える薬です。TNFαというサイトカインの作用を阻害します。活動期や再燃期の炎症を抑えるときや、その後の維持療法にも有用な薬です。
潰瘍性大腸炎に対する抗TNF―α製剤の投与は、ステロイド製剤の使用量を減らすことにつながることから、難治性の方やステロイド製剤がなかなか減らせない方には積極的に使用を検討します。内服薬はなく、点滴製剤や皮下注射製剤を投与します。

抗IL-12/23抗体製剤、抗IL-23p19抗体製剤

同じように炎症を引き起こすサイトカインを抑制する製剤ですが、また別のサイトカインを阻害します。同じく内服薬はなく、点滴製剤と皮下注射製剤となります。

JAK阻害薬

JAKとはヤヌスキナーゼの略です。細胞の表面にはサイトカインという物質がくっつく場所(受容体)があります。各受容体にはJAKというタンパク質が付着しており、JAKを介して炎症を起こす命令が細胞内に伝わっていきます。このJAKを阻害することで潰瘍性大腸炎の炎症を抑える製剤です。

抗α4β7インテグリン抗体製剤

白血球の一種でTリンパ球という免疫細胞があります。Tリンパ球は炎症反応を起こす際に重要な白血球で、その表面にあるα4β7インテグリンに対する抗体の製剤です。α4β7インテグリンはTリンパ中が消化管の細胞にくっつくのに必要なタンパク質で、その作用を阻害し、腸管で炎症反応が起こることを抑制します。

 - 免疫抑制剤

タクロリムスやシクロスポリンといった薬剤を使用します。いずれもカルシニューリン阻害薬で免疫に重要なTリンパ球の増殖や活性を強力に抑制します。

 - 外科手術

内科的治療に反応しない重症の潰瘍性大腸炎には手術療法が選択されます。全結腸切除を行うことで、炎症を起こしている大腸をすべて切除します。根本的には治癒しますが、大腸を全摘出するため、侵襲が強い治療法となります。


日常生活での注意点

潰瘍性大腸炎の患者様は、なるべく良い状態(寛解期)を保つには日常生活の見直しが大事です。特に厳しい制限はありませんが、炎症のきっかけになる腸への負担を避けるよう心がけましょう。ストレスや疲労は症状の悪化につながることがあります。適度な休憩や休息をとり、身体にストレスを溜めないように心掛けましょう。しっかりと治療を継続することで妊娠や出産も可能です。

 - 睡眠

睡眠時間はしっかり確保しましょう。夜更かしや寝不足はなるべくさけてください。
規則正しい生活を送りましょう。

 - ストレス

ストレスや疲労は潰瘍性大腸炎を悪化させます。溜まってきていると自覚がある場合はなるべく休暇や休憩をとり、ストレスや疲労を蓄積させないように心がけてください。

 - 運動

過度な運動は控える必要がありますが、適度な運動を習慣的に行うことは寛解期の継続に有効だと考えられています。医師と相談し、無理のない範囲で行うようしましょう。

 - 食事

寛解期は食事制限がありませんが、暴飲暴食を避けましょう。栄養バランスのとれた食事を心がけるようにしてください。

 - アルコール

飲酒の影響についてはまだはっきりとわかってはいませんが、寛解期の適切な量の飲酒は問題がないと考えられています。

 - 妊娠・出産

潰瘍性大腸炎でも、妊活・妊娠・出産した患者さんは多く存在します。ただし、その間も潰瘍性大腸炎の治療を続けて状態をしっかりコントロールすることが不可欠です。妊娠して慌てて自己判断で服薬を中止してしまうと、潰瘍性大腸炎の状態が悪化し、母体にも胎児にも負担が大きい治療が必要になってしまいます。
妊活前に主治医と相談し、妊娠した際の治療計画を事前に立てておくと安心できます。また、いきなり妊娠がわかった場合は、できるだけ早く主治医を受診し、その後の治療について相談してください。

お問い合わせ

東海内科・内視鏡クリニックでは地域の皆様の健康に貢献するため、内科・婦人科診療をおこなっています。

潰瘍性大腸炎という疾患は増悪と緩解を繰り返す点や、それによってステロイド製剤を多く使いすぎてしまうようなことが起こりうるため、 治療には必ず豊富な経験をもった専門医の様々な知識と経験が必要な疾患です。 しかし一方で、ここ最近のいろいろな薬剤の登場で寛解期を維持できやすくなってきているように思われます。 当院ではこれまでの潰瘍性大腸炎の診療経験と、新たな抗体製剤などを活用してクリニックで最大限可能な高いレベルの治療を行います。治療を希望される方はお気軽に当院へご相談ください

文責:東海内科・内視鏡クリニック岐阜各務原院 院長 神谷友康

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    :内科外来 :婦人科外来 :内視鏡検査
    ※:日曜内視鏡検査(月1回診療(9:00~12:00、13:00~16:00))
    :土曜内視鏡検査(毎週(12:00~14:00))
    上部内視鏡検査は診療日の午前中に毎日行っています。
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